研究概要 |
II型コラーゲン(IIC)特異的T細胞株K-102が示すT細胞ワクチン活性がそのTCRに依存していることから,我々はK-102細胞のTCR遺伝子のクローニングを行った(スイスのスタインメッツ博士らとの協同研究)。その結果,K-102はαβ型のTCRを有し,α鎖はV_<α8.2>J_<α37>,β鎖はVβ12Dβ1.1Jβ1.1Cβ1であることが明らかになった。そこで,本研究計画の目的の1つである,このTCR遺伝子をベクターに組み込んで,適当なrecipientT細胞にトランスフェクトした後,その表現を調べるために必要なVβ12に対するモノクローナル抗体(MoAb)の作成を試みた。K-102のT細胞ハイブリドーマ(BL-17)でマウスを免疫して,TCRに対するMoAbを作ろうとしたが成功しなかった。しかし,米国ワシントン大学の金川博士が抗Vβ12MoAb(MR11-1)の作成に成功したことを知り,彼にMR11-1を分与してもらい,K-102との反応性を調べた。その結果,MR11-1はK-102と結合するのみでなく,K-102のIICによる試験管内増殖反応を抑制するなど,K-102細胞のTCR機能に対して抑制的に作用することが判明した。さらに,K-102細胞による受身発症関節炎及びIIC感作によるactiveCAの発症を抑制することから,CA発症に関与するT細胞レパートリーに於けるVβ12の重要性が示唆された。一方,遺伝子クローニングで明らかになったK-102のTCR遺伝子を細胞にトランスフェクトした時にK-102と同様のワクチン活性を誘導できるかどうか、またCA発症を誘導できる様なTCRを再構築できるか否か調べる目的でSWRマウス(Vβ12遺伝子を先天的に欠損し,CA非発症性で,CA感受性のDBA/1マウスと同じH-2^qハプロタイプを有する)を用いてTCRVβ12のトランスジェニック(tg)マウスを作成して調べた。その結果CA発症に於けるVβ12遺伝子の重要性が示唆されたが,これのみではCA発症には不充分で,Vαなど他の因子の共存の必要性が示唆された。抗Vβ12MoAbの作成やK-102のTCRの構造の情報など本研究の土台が漸く整ったので,ワクチン蛋白の開発などを目指して研究を続行中である。
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