研究概要 |
本研究によって以下の諸点が明らかになった。 1)乳癌多発マウスである事が知られているSHNマウスの内因性ウイルスゲノムの解析を行った結果,LTR部分のOpen Readingフレームの280-380 codonsで他の既知の乳癌多発マウスには認められない変異が認められた。この一方,調節領域では,変異は少ないことが判明した。 2)SHN系マウスにおいて,乳癌ウイルスの遺伝子発現の臓器特異性を検討した所,皮フにおいて大量にゲノムに組み込まれない乳癌ウイルスDNAが発見された。このウイルスは,サイズからほぼ乳癌ウイルスの全長である16kbに一致していた。 3)エネルギー制限によって乳癌ウイルスの遺伝子発現が抑制されることが知られているが,このメカニズムについて検討した。 a)エネルギー制限により,マウスは仮性冬眠状態に入ることが,認められた。最低体温は23℃程度にまで低下した。 b)エネルギー制限による低体温の生理的影響を検討した所,仮性冬眠は,細胞増殖を著しく抑制する事が発明した。この抑制は,摂取エネルギーの増加と,加温によって可逆的に解除されることが判明した。 4)エネルギー制限による脳下垂体プロラクチン(PRL)の産生:PRLは乳腺上皮の細胞増殖を通じ乳癌ウイルスの増殖を制禦する間接的機序も考えられる。そこでエネルギー制限によるPRL産物の抑制を検討した所,エネルギー制限により脳下垂体の細胞数の減少のほか,PRL mRNAの特異的減少も認められた。 5)エネルギー制限によるCu^<+1>-ATPase活性:エネルギー制限により細胞回転,PRL mRNAの減少を認めたが,これらがCu^<+1>の細胞内動態と関連することも考えられたため,Cu^<+1>-ATPase活性の測定を行った。その結果,エネルギー制限によって抑制が認められた。
|