研究概要 |
平成3〜5年度において科学研究費を使用して作成した研究概要は下記の通りである。 1.生体試料中の微量元素の分布をマクロレベルで、しかも2次元分布として検出する方法を高エネルギー研究所のシンクロトロンを使って新たに開発した。この方法の特徴は、試料組織を非破壊で2次元分布として濃度分布を示すことが可能となったことである。これを用いて、下記の研究成果を得た。 2.ラット及びモルモットの脳,乳児の延髄では必須元素であるZnとCuが明瞭な2次元分布を示し、Znは試料全面にほぼ平均的に分布したが、Cuは周緑部に濃集した。 3.ラットに塩化メチル水銀,塩化エチル水銀及び塩化フェニル水銀をそれぞれ投与した場合の腎臓では、Hg,Cu,Zn,Seのいずれも髄質よりも皮質に多く存在し、Zn,Cu,Seの相関関係は0.33〜0.46で、必須元素間の分布の相関性が低く、Hgと必須金属間の相関関係はいずれも0.76以上であった。 4.前立腺癌と前立腺肥大症の組織の亜鉛と銅の2次元分布を組織病理学所見と対応させた結果、前者の場合は、Zn,Cuは共に正常部位よりも癌部位に多く存在していた。一方肥大症についてはZn,Cuが共に組織が密な間質よりも疎な肥大節に多く存在していた。 5.事故死した22才,40才及び61才男性の腎横断面の金属2次元分布は、Zn,Cu,Seのいずれの元素も髄質よりも皮質に多く存在した。またこれら必須元素間の相関性は有意の差(P<0.01)がみられ、特に亜鉛と銅の間で高かった。
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