研究概要 |
1.カドミウム(Cd)とグルタチオン(GSH)複合体の形成 Cdと還元型GSHを1:1、1:2または1:3の濃度比に50mM TrisーHC1,pH7.4緩衝液に溶かし室温に一夜放置した。その結果、形成されたCdーGSH複合体を5DiolーCosmosilカラム(7.5x300mm)を装着したFPLC装置を用い、上記の緩衝液で展開して分離を試みた。複合体は極めて分離不十分な複数ピ-クとして溶離された。次に複合体分離にイオン交換樹脂カラム、mono Qおよびmono Sカラムを用いたが、やはり分離不十分な複数ピ-クとして溶離された。この様にCdとGSHが一定比率の複合体の分離は果たせなかった。そこでCdとGSHを1:1の比率で含むが、Cdに対するGSHの比率が異なる種々のCdーGSH複合体混合物溶液として以下に示す如く気管内注入実験を行った。 2.上記緩衝液に0.82mMずつのCdとGSHを含むCd・GSH混液を室温で一夜放置後、その0.5mlを体重約300gの一群の雄ラット気管内にネンブタ-ル麻酔下で注入した。他の一群のラットには同濃度のCdのみ含む溶液を注入した。注入後0,6,12,30及び48時間に麻酔し、生食水で肺を潅流して剔出。Cd注入群の肺は出血性炎症が強く、時間とともに増悪した。一方CdーGSH複合体注入群では炎症所見はCd注入群に比べやや軽度にみえた。肺のGSHはCd投与群では、6時間後に有意に減少し、その後48時間以内に回復しなかった。然しCdーGSH複合体投与群では一定した減少を認めず、目下その再現性を確認する実験を継続中である。またメタロチオネインの誘導時間に関して、Cd投与群とCdーGSH投与群間の異同を確認すべく実験中である。
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