研究概要 |
Balb/c雌マウスを用いた。排卵を誘発させるために48時間間隔でPMSとHCGを投与し,翌朝膣栓の見つかったものを妊娠マウスとし,その日を妊娠第1日とした。妊娠4日目に子宮を取り出し,培養液によって子宮を洗い出し,胞胚(blastocysts)を流出させた。 既知変異原としてEMS(ethylmethanesulfonate)および塩化ニッケル(NiCl_2)を用いて,磁場が複合した場合の初期胚への影響を調べた。8-chamber dish の各セルに培養液を0.8mlづつ注入し,おのおののセルに一定数(3-5個)の胞胚を分けた後にEMSあるいは塩化ニッケルを添加した。さらに,このdishを0.8Tの磁場中に30分間置き,磁場暴露を行った。暴露終了後,dishを37°C,CO2 5%の条件下で6日間培養を行い,次の2つの指標を用いて初期胚への影響を評価した。すなわち,(1)Trophoblast Outgrowth(栄養膜芽細胞の萌出;TO)の形成,(2)Inner Cell Mass(内細胞塊;ICM)の形成の2つである。(2)のICMについてはさらにICMの形成なし,1層ICM,2層ICMの3段階に分類した。 その結果,変異原の濃度が高くなるにつれてTOおよびICMの形成率が低下した。なかでも最も感受性の高かったのは2層ICMの形成であり,ついで1層ICM,TOの順になっていた。変異原の濃度が高くなるにつれてTOおよびICMの形成は抑制されたが,EMSの場合もNiCl_2の場合も磁場暴露群と磁場非暴露群との間に有意な差は認られなかった。また,姉妹染色分体交換(SCE)でも磁場暴露群と磁場非暴露群との間に有意な差は認められなかった。
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