研究概要 |
1)C型肝炎ウイルス(HCV)感染に関する生活環境要因を網羅した調査票を準備して、HCV感染者と非感染者の症例対照研究とHCVゲノタイプなどの分析を実施しているが、未だ対照群の情報収集が十分でない。 2)HCC発症に関する生活環境要因を網羅した調査票を準備して、HCV関連HCC症例と病院対照群の症例対照研究を行っている。さらに、HCVゲノタイプなどの分析を実施しているが、未だ対照群の情報収集が十分でない。 3)九州某赤十字血液センターにおける平成元年11月以降平成4年9月までの無症候性HCVキャリアリストの整備・重複チェックを行い、3,237例(男1,552例、女1.685例)の長期追跡研究を実施した。観察期間は男女とも平均2.5年であり、観察人年は男3,852.5、女4,187.8であった。全死因の観察死亡数・期待死亡数・SMR及び95%C.I.は、男それぞれ20、25.32、0.79(0.48〜1.22)、女それぞれ9、12.26、0.73(0.34〜1.39)であった。全悪性腫瘍のSMRは男1.07、女1.06であり、肝がんを除いたその他の悪性腫瘍のSMRは、男0.37、女0.95であり、両疾患群に男女とも統計学的に有意な高まりを認めなかった。肝がん粗死亡率は男207.7/10^5、女23.9/10^5であり、男のほうが女より統計学的に有意に高かった。肝がん観察死亡数・期待死亡数・SMR及び95%C.I.は、男それぞれ8、2.13、3.75(1.62〜7.38)、女それぞれ1、0.38、2.60(0.07〜14.51)であり、男で統計学的に有意な高まりを認めた。 肝機能トランスアミナーゼGPT値で2分割して、男の肝がんSMR及び95%C.I.を計算したところ、GPT35以下群1.82(0.38〜5.32)、GPT36以上群10.25(3.33〜23.91)であり、GPT高値群SMRのほうが統計学的に有意に高かった。日本肝癌研究会等の報告によるHCV抗体陽性肝がん割合(60歳以上で約80%)を勘案し、肝がんSMR及び95%C.I.を概算したところ、男18.74(8.09〜36.91)、女13.02(0.33〜72.55)となった。この値と当該血液センター管轄地域の高齢者のHCV抗体陽性率(5%)を用いて、HCV関連肝がんの人口帰属危険度及び95%C.I.を計算したところ、男47.0%(26.2〜64.2)、女37.5%(0〜78.2)となった。肝硬変による死亡には、男女とも統計学的に有意な高まりを認めなかった。 4)正確なHCVゲノタイプ解析方法を開発して、HCVゲノタイプと疫学特徴(感染性など)及び臨床病態(インターフェロン反応性、慢性化、肝がん発症リスクなど)との関連を調べている。
|