研究概要 |
高齢者の身近な者からみた「外面的な」知的機能についての評価法(観察法)の実用化をめざして、その有効性について検討した。 1.パイロットテストとして,和歌山県下Y保健所管内の65歳以上の寝たきり老人329名を訪問調査した。寝たきり老人の見当識は,時間については33.4%に,場所については15.8%に,また,人については14.0%に障害がみられた。問題行動としては不潔,徘徊,攻撃,昼夜逆転が多かった。 2.和歌山県K市内U地区の65歳以上の在宅老人を対象に高齢者の介護負担をアンケート調査した。対象者1,405名について,同居家族からみた老人の健康状態,介護の必要度,痴呆の有無とその程度を調べた。有効回答は1,104名(78.6%)であった。痴呆の内訳で「ややボケが目立ち,時に介護が必要である」が30名(2.7%),「かなりボケが進行し,常に介護が必要である」が7名(0.6%),「完全にボケていて,会話が成立しない」が3名(0.3%)であったが,「ややボケが目立つ」というケースに相当高い痴呆がみられるにもかかわらず,現在公的サービスを受けておらず,公的サービスを求めていない,むしろ,公的サービスに期待していない回答が多かった。このような観察法の結果は,さきに調査した老人ホーム職員の場合とは逆の結果であり,痴呆老人のおかれている条件がきびしく,家族も諦めているために,無理に軽く評価するようなバイアスが加わっているものと考えられた。 3.当初予定していた老人ホーム入所希望者に対する「観察法」による評価の活用は,行政的に入所判定業務が市町村に委ねられるようになったこともあって,入所判定委員会での審査書類の変更・整備が難しくなった。このため,今後独自にその実現に向けて関係機関への働きかけを続けることにしたい。
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