研究概要 |
犬の腸管にループを作製してループ内に17%エタノールを注入し,門脈,肝動脈,下大静脈及び大動脈から経時的に採血し血中エタノールとアセトアルデヒド濃度を測定した。また150分後にループ内から溶液を回収し,エタノール濃度と回収液量を測定した。エタノール単独とアルコール脱水素酵素阻害剤で前処理した群では,エタノール投与で門脈血中のエタノールは急激に上昇し,後者では高濃度で推移した。回収液は減少し,液中のエタノールはいずれもほとんど吸収されていた。 一方,アルデヒド脱水素酵素阻害剤であるシアナマイドで前処理した群では,エタノール注入後門脈血中のエタノールは徐々に上昇し,150分後にもまだ吸収期を示し,肝静脈中のアセトアルデヒド濃度は著明に高濃度を示した。またループ内から投与量の約130%の溶液が回収され,明らかな腸液の分泌がみられ,エタノールの吸収は70%程度であった。 これらのことから血中にエタノールが高濃度となっても腸管からの吸収は影響されないが,アセトアルデヒドが高濃度となると明らかにエタノールの吸収が抑制されることが判明した。この吸収抑制はアセトアルデヒド自身によるものか,これを介して何かの機構が関与しているものと考えられる。 そこで今回,門脈の血流の影響について検討したところ,門脈血中エタノールが上昇すると血流はわずかに低下するが,特に肝静脈中でアセドアルデヒドが高濃度となると門脈血流が著明に減少することが判明した。このことは肝内に門脈血流を支配する何らかの機構が存在することが示唆され,今後,このことについて研究する予定である。
|