研究概要 |
前年度において,O型血清中の抗A,抗B,抗A,Bの各抗体は,A型あるいはB型血清由来の型的抗体に比べて,いずれも亜型・変異型血球に対する凝集能が高いことを明らかにした.そこで,今年度は,O型血清由来の型的抗体とA型ならびにB型血清由来の型的抗体との間の糖結合特異性の差異について糖固定化吸着体(シンソルブ)を用いた凝集素吸収試験法によって比較検討した.O型とB型血清由来の各抗A抗体は,A型活性を示すGalNAcα1-3Gal-,GalNAcα1-3(Fucα1-2)Gal-,GalNAcα1-3Galβ1-4GlcNAc-,GalNAcα1-3Galβ1-4Glc-,GalNAcα1-3GalNAc-の各糖のシンソルブによって全く同じように吸収され,また,O型とA型血清由来の各抗B抗体は,B型活性を示すGal-,Galα1-3(Fucα1-2)Gal-,Galα1-3Galβ1-4GlcNAc-,Galα1-3Galβ1-4Glc-の各糖のシンソルブによって全く同じように吸収された.O型血清由来の抗A,B抗体は,A型あるいはB型活性を示すシンソルブのいずれによっても吸収されたが,シンソルブによっては吸収した後に残存する抗体活性が単特異的抗体に比べてやや高いものがあった.その外に非還元末端にα1-3結合ではないがGalNAcまたはGalをもつ糖のシンソルブ(13種)とH活性糖のシンソルブ(2種)についても検討したが,これらによってはいずれの抗体も吸収されることはなかった.この吸収試験では,亜型や変異型血球を用いず,もっぱら通常のA型ならびにB型血球を指示血球として用いたことや,今回用いた糖が型活性を示す糖鎖の中のほんの一部に過ないことなどから,直ちに結論する訳にはいかないが,糖に対する結合特異性については,検討した範囲において,O型血清中の型的抗体とA型あるいはB型血清中のそれとの間に著しい違いは認められなかった.
|