研究概要 |
悪性腫瘍はしばしば生理活性物質を畜産し、種々の腫瘍随伴症状を併発する。これらの中で最も多いのが、副甲状腺ホルモン関連蛋白(PTHrP)産生による高カルシウム(Ca)血症である。このPTHrPの産生制御についてATL細胞を用いたin vitroの系でNorthern blotting法により検討した結果、インターロイキン1α及びグリココルチコイドがPTHrP-mRNAの発現を抑制し、またフォルボールエステル(PMA)及びエンドテリン(ET)がその発現を促進することを示唆する成績を得た。また高感度で特異性の高いPTHrPのラジオイムノアッセイ系を開発し、血中濃度を測定したところ、健常成人の血中PTHrP濃度は35.7±15.6pM(mean±SD)で、高Ca血症を呈したATL、肺偏平上皮癌患者では有意に高値を示し、化学療法などで腫瘍が縮小した場合にはPTHrP濃度が下がり、QOLも向上することが確認された。血清Ca値が正常の悪性腫瘍患者のPTHrP濃度は正常であった。以上から、腫瘍によるPTHrP産生の制御は臨床的にも重要であることが示された。 私達は悪性腫瘍の一部がETを産出し、線維芽細胞の増殖を促進させ、癌組織内の結合識の増生を促進していることを示す成績を得ている。今回、ETが線維芽細胞に作用した際、細胞内CaプールからCaが放出され細胞内Ca濃度が上昇することを見出した。CaプールからのCaの放出は通常inositol-1,4,5-trisphosphata(Ins-1,4,5-P_3)の増加によるものと考えられている。しかし、ETは線維芽細胞でこれを上昇させないことを見出した。ETは血管平滑筋細胞ではIns-1,4,5-P_3を増加させ、またGRPは線維芽細胞でもこれを増加させた。従って、ETは線維芽細胞においてIns-1,4,5-P_3以外のものをCa放出シグナルとしているのではないかと考えられるに至った。
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