研究概要 |
ヒトリンパ球をCD8陽性T細胞、CD4腸性下細胞、B細胞に分離精製し、イオノマイシン(IM)とフオルボ-ルエステル(PMA)の混合刺激を行い,分裂増殖反応を誘導する実験系を確立した。その結果、老年者では何れのリンパ球サブセットにおいて、若年者に比しリンパ球の分裂増殖能の低下が認められたが、CD8陽性T細胞が低下の度合が最も著しく、次にCD4陽性T細胞、B細胞の順であった。IMとPMAの混合刺激の後の細胞内遊離カルシウム濃度を測定し、老若間で比較した。その結果、老年者では有選に低下していた。殊に、低濃度のIMの場合、老若間の差が著しかった。次に癌原遺伝子c-myc及びcーmyb遺伝の活性の度合をcーmyc mRNA,cーmyb mRNAの濃度で比較した。cーmyc及びcーmyb mRNAの発現の程度や最高値に達する時間には両者の差を認めなかった。しかし,老年者ではcーmyc mRNAの分解過程が遅延しているという結果が得られた。1L-2mRNA,1Lー2Lセプタ-α及びβmRNA、NFーKB mRNAについては現在解析中である。次に、cーmyc遺伝子のメケル化の程度を老若間で比較した。老年者では,cーmyc遺伝子Xon Iに存在するメチル化感受性酵素XhoIサイトのメチル化の程度が低下(脱メケル化の亢進)していることが明らかになった。興味深いことに、脱メチル化の程度は、CD8陽性T細胞、CD4陽性T細胞、B細胞の順に著しく、老化に伴う分裂増殖胞低下の順と一致した。最後に、タラリン等、細胞内カルシウムイオン濃度の調節作用を持つ薬物の老化T細胞に対する作用を検討した。その結果、我々がすでにマラスを用いた事で明らかにした様に一程の効果が認められることが明らかになった。さらに、今後稿細な解析を進めたい。
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