研究概要 |
1.昨年度の研究で、まず、本研究の基幹を成す微小組織よりのT細胞の分離およびexpansionに関し基礎的実験を重ね、growth factor、feeder細胞、レクチンの添加とT細胞の増殖状況を観察し、かなり安定した実験手技ならびに方法を確立することができた。そして、実際に、シェーグレン症候群の唾液腺よりT細胞株を、および同症候群の髄膜炎患者の髄液より多数のT細胞クローンを樹立することができた。 2.本年度は、それらのT細胞のEBウイルス抗原に対する免疫応答に関して詳細な検討を行なった。まず、髄液由来のT細胞クローンは、全てCD3+,TCRα/β+,CD4+,CD8-,CD16-,CD56-,DR+であり形質的にhelper/inducerT細胞であった。当初、その中の一部のクローンは、EBウイルスでトランスフォームさせた自己B細胞に対してキラー活性を示したが、その後の詳細な検討によりこれはレクチン依存性でありウイルス特異的CTLである可能性は否定された。つぎに、唾液腺由来の短期培養T細胞に関しては、CD3+,TCRα/β+,CD4dominant,CD16-と、組織染色上の知見とパラレルな形質を示した。これを用いて、EBウイルス株化自己B細胞、およびコントロール自己細胞としてHTLV-1株化T細胞を標的に、ウイルス特異的細胞障害活性を測定したが、活性は検出されず、また、調製EBウイルス抗原で感作した自己細胞を用いてウイルス特異的細胞増殖反応を観察したが、特異的応答は認められなかった。 3.EBウイルスに対する特異的T細胞応答は検出されなかったが、本研究で我々の行なったアプローチである組織よりのT細胞分離とin vitro expansionの方法論的確立は、自己抗原を病変組織T細胞免疫応答の観点から追及する上できわめて有用と考えられた。
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