研究概要 |
(1)血管炎合併SLE患者の末梢血リンパ球に発現されるVLA-4分子の機能:前年度の研究成果からも明らかなように,血管炎合併SLE患者の末梢血リンパ球上にはVLA-4,LPA-1分子の発現が亢進していることが示された。インテグリン接着分子は,たとえそれが構成的に発現されていても,必ずしも接着機能と並行しないことから,その機能が問題となる。そこで,VLA-4のリガンドであるフィブロネクチンのCS-1部位のアミノ酸を合成し,これに対する接着アッセイを施行したところ,血管炎合併例で有意の接着能亢進が観察された。他のリガンドであるVCAM-1分子に対する接着は,γ1L-1とTNFで刺激したヒト〓帯静脈血管内皮細胞を用いて施行した。同様に、血管炎合併例では著明な接着能の亢進が観察された。 (2)VLA-4分子上の機能エピトープ:VLA-4分子上には、さまざまな接着機能と相関する機能エピトープが存在することが知られ,現在,A,B,C,の3つに分けられている。SM-27モノクロナール抗体は,このうちBエピトープを認識するが,他のエピトープの発現は不明であった。そこで,これらエピトープを認識するモノクロナール抗体で同時に検索したところ,血管炎合併例では,全ての機能エピトープの発現が亢進していることが明らかとなった。 (3)VLA-4分子の構造:VLA-4分子の構造を免疫沈降法によって解析したところ,血管炎合併例では,140,80,70KdaのVLA-4分子α鎖とそのフラグメントが,正常人,血管炎非合併SLEに比して濃く染色され,発現分子数が亢進していることを直接的に明らかにした。驚くべきことに,約50%の血管炎症例に,高分子量型α鎖,すなわちα4/180が観察された。
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