研究概要 |
慢性関節リウマチ(RA)における間葉系細胞異常活性化の機序を検討する目的で、HTLVー1 associated arthropathy(HAAP)をモデルとして滑膜におけるサイトカイン産生異常と滑膜増殖の検討をおこなった。その結果、1)HAAP滑膜織培養上清中には培養1日目よりILー6活性を認め,培養4、7日間にはILー1,ILー6活性を認めた。一方,ILー2活性はいづれの時期にも検出できなかった。2)HAAP滑膜組織では血管内及細胞および一部の滑膜細胞に強いICAMー1は抗原の発現を認めた。さらにICAMー1抗原を発現した小血管周囲にはILー1およびILー6陽性の滑膜細胞の集族を認めた。3)HAAP滑膜細胞培養上清から分離したfractionを加えることによりRA滑膜細胞の増殖が促進された。4)RA患者より得られた関節液単核細胞はHTLVー1ビリオンの添加によりILー1,ILー6産生の増強が認められた。以上の結果より、1)HAPP滑膜組織ではconstitutiveにILー1およびILー6が産生されている事が明らかとなった。2)小血管内及細胞上の接着分子の発現の増強が小血管周囲のサイトエイン(ILー1,ILー6)産生細胞の集族と相関する傾向がみられた。即ちHAAP滑膜におけるサイトカイン産生増強は接着分子発現と関連すると推測された。3)HAAP滑膜細胞がRA滑膜細胞の増殖を促進する因子を産生している可能性が示唆された。4)HTLVー1ビリオン添加によりRA関節液細胞のサイトカイン産生能が増強されたことより、HTLVー1抗原がRAの免疫系にも影響を及ぼす可能性が示唆された。HAAP滑膜における以上のような結果が,1)滑膜細胞にHTLVー1のproviral DNAが組み込まれる事によりトランスに活性化された細胞側遺伝子の産物により引き起こされるのか、あるいは2)HTLVー1感染Tリンパ球や血管内及細胞が重要かという点についての検証は今後の課題である。いづれにしても、RA解明の重要なモデル疾患と考えられる。
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