研究概要 |
平成5年度における新たに得られた知見は、以下の様である。 1.原発性胆汁性肝硬変患者83例を対象に血清中のimmunoreactive Mn-SODを測定した結果、68例(82%)の症例で他の肝疾患および正常対照にくらべ著明なMn-SODの増加を認めた。組織学的に早期のPBC(ScheuerI.II)においてもMn-SODが高い値を示し、また病期の進展に伴ってMn-SODはさらに増加した。またこのMn-SODはUDCA投与によって低下すること、そしてUDCA投与による血清Mn-SOD正常化の割合はScheurI,II期ほど高率であり、ScheuerII,IV期では正常化しにくいことを明らかにした。 2.PBC患者から得られた肝生検組織中においてMn-SOD酵素蛋白がウィルス性肝疾患と比較して増加していることを免疫染色で示した。Mn-SODはScheuerI,II期からすでにPBC肝組織中で増加し、ScheuerIII,IV期では更に増加していた。肝細胞と胆管細胞が染色され、結合織に近接する肝細胞が特に強く染色された。 3.PBC肝組織をもう一つのSODであるCu,Zn-SODで免疫染色するとウィルス性肝疾患よりも強く染色された。肝細胞の細胞質が強く染色され、さらに核膜も強く染色された。PBCの肝細胞ではミトコンドリアに局在するMn-SODだけでなく、細胞質にあるCu,Zn-SODも増加することが示された。 以上のように、PBCとフリーラジカルとの密接な関連性が徐々に明らかになりつつあり、今後更なる研究が必要である。
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