研究概要 |
Morrisらの方法を参考にして,ラットとイヌにTrinitrobenzen sulfonic acid(TNBS)とethanolを経腸的に投与して炎症性腸症患のモデルを作成し,内視鏡的および病理組織学的に経過観察を行いこのモデルの免疫学的特性を明らかにした。ラットの遠位大腸炎およびイヌの回腸炎は長期間持続する潰瘍性病変を特徴とし,ヒトのCrohn病に類似している。ラットでは内視鏡的観察で明らかな潰瘍性病変を有するものは血中抗TNBS抗体価が高値となる。また潰瘍周辺での組織内にもTNBSの局在を認めた。潰瘍性変化を認めなかった群ではTNBS抗体価は低値であった。局所における抗原の侵入と,これによる感作が本モデルの腸管の潰瘍性病変の治癒を遷延させると考えられる。またラットのモデルでは内視鏡的scoring systemを確立し,薬物の治療効果についても検討を行った。5ASA100mg/kgの経口投与および注腸投与では,投与群で治癒が促進される傾向にあった。抗leukotriene剤のAS-35およびTBX(東京田辺製薬)の経口投与では治癒が促進される傾向にあり、AS-35ではdose-responseも確認した。イヌのモデルでは炎症性腸疾患の機能評価として逆行性回腸胆汁酸負荷試験を考案し,腸管吸収能の基礎的検討を行ない,これを臨床例への応用した。回腸病変のない健常犬では負荷したUrsodeoxycholic acid濃度に対し,血中総胆汁酸濃度の上昇はDose-Responseであった。実験的回腸病変を作成した後では,血中総胆汁酸の増加量が有意に低かった。われわれが開発した逆行性回腸胆汁酸負荷試験はクローン病に多い回腸病変に選択的に負荷できるなど,経口負荷に比べとくに回腸病変の評価法として有用である。さらにイヌのモデルにおいては腸管運動について検討中である。
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