研究概要 |
膵腺房細胞からの酵素分泌には細胞内メッセンジャーとしてCa^<2+>が重要な役割を果たしている。細胞内メッセンジャーのレベルではA23187により細胞内カルシウム濃度を上昇させたり、TPAによりCキナーゼを直接活性化させたりすることによりアミラーゼ分泌を刺激することができる。一方、cAMP系についても、膜透過性のあるcAMPの誘導体(dbcAMP)によって分泌は刺激される。これらの細胞内メッセンジャーの相互作用について検討すると、A23187とdbcAMPとを同時に加えるとアミラーゼ反応は増幅される。またCa^<2+>系の中でもA23187とTPAとを同時投与するとアミラーゼ分泌は増幅され、Ca^<2+>とCキナーゼ、cAMPという細胞内メッセンジャーのレベルで相互作用がみられるのである。このことはpermeabilized aciniでも同様で、Ca^<2+>に他の細胞内メッセンジャーであるTPA,GTprs,cAMPを同時投与するとアミラーゼ分泌はpotentiateされる。しかしながらCa^2の存在しない状態ではアミラーゼ分泌は刺激されない。したがって膵腺房細胞における細胞内メッセンジャーの相互作用ではCa^<2+>が中心的役割を果たしていることがあきらかになった。 カルモデュリンは代表的な細胞内カルシウム受容蛋白質であり,Ca^<2+>と結合して活性化され,カルモデュリン依存性蛋白質リン酸化酵素(カルモデュリンキナーゼ)を活性化する。CCKやカルバコールによるアミラーゼ分泌反応はカルモデュリン阻害剤であるW7やカルモデュリンキナーゼII阻害剤であるKN62により有意に抑制された。W7,KN62はA23187およびTPAによる単独刺激については有意の抑制は示さなかったが、A23187+TPAによるsynergisticなアミラーゼ分泌を有意に抑制した。permeabilizedaciniではアミラーゼ分泌はCa^<2+>の濃度依存性に増加し、Ca^<2+>濃度を1μMにするとアミラーゼ分泌は最高に達した。W7,KN62はこのCa^<2+>依存性のアミラーゼ分泌に影響は与えなかった。ところがCa^<2+>存在下(1μM)でのTPA,GTPγS,cAMPなどによるアミラーゼ反応の増強作用は有意に抑制した。このことからカルモデュリンはCa^<2+>と他の細胞内メッセンジャーとの相互作用に重要な役割を果たしていることが示唆された。
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