研究概要 |
LECラットを用いて脳内ペプチド(CCK,somatostatin,neuroki-ninA&B)とアンモニア・グルタミン酸代謝との関連を検討した。またグルタミン酸受容体拮抗薬(MK801)の急性アンモニア中毒ラットに対する効果を検討した。以下の成績を得た。(1).脳症発生したCラットでは昏睡度と血液アンモニア,血漿芳香族アミノ酸濃度と正の相関を認め,肝性脳症のモデルとして有用と考えられた。(2).脳症発生したCラットの大脳皮質のCCKimmunoreactiuityは41.5±2.6(pmol/g,wetwt)で脳症発生しないLECラットの67.1±6.9に比し有意に減少した。(3).脳症のないLECラットの大脳皮質のCCK陽性神経細胞数は28.5±0.7(一視野当り,×125)であった。脳症I,II度では脳症のない場合と差がなく,脳症III〜V度では14.1±2.0と有意に減少した。またCCK陽性顆粒は大脳皮質の全層に認められたが,神経線維では明確に認められなかった。(4).脳症は伴うLECラットの脳のsomato-statin-14 like immunoreactivstyとsomatstatin-28(1-12)-likeimmunoresctivstyは脳症を伴わないLECラットに比し,視床下部,延髄,線染体,脊髄で減少した。(5).脳症は伴うLECラットの線条体と脊髄でneurokininBは脳症を伴わないLECラットに比し有意に減少し,これらの減少は血漿アンモニアと逆相関したが,芳香族アミノ酸とは関連を示さなかった。neurokininAには変動を認めなかった。(6).脳症を認めるLECラットの脳ではグルタミンが増加し,グルタミン酸は減少傾向を,GABAは減少した。この変動の程度は脳の部位により差を認めた。(7).MK801を前投与した急性アンモニア負荷ラットでは,痙攣出現までの時間が短縮した。これは脳のアンモニア解毒機構としてのグルタミン酸からグルタミンへの代謝障害によりアンモニアの毒性が増強したためと考えられた。
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