研究概要 |
エタノールの急性投与が肝微小循環に及ぼす影響を、固定飼料で飼育したWistar系雄性ラットを用いて観察した。ラット経胃的に20%エタノール(3.0g/kg,15ml/kg),30%エタノール(4.5g/kg,15ml/kg)及び40%エタノール(6.0g/kg,15ml/kg)を急性投与し、蛍光色素で標識した赤血球が肝類洞を通過する像を蛍光レンズを装着したSITカメラで撮像した。ビデオテープに録画した像をIM-Capiflowで解析し、赤血球速度を測定した。コントロール群(生理食塩水15ml/kg,経胃的投与)では肝類洞を通過する赤血球の速度に有意な変化を認めなかったが、20%エタノール群では投与後5分より赤血球の速度は上昇し、投与後10〜20分の間に最高値(投与前の1.4〜2.5倍)となり、60分間の観察時間中投与前値を上回った。また、肝類洞を通過する赤血球の速度はコントロール群、20%エタノール群ともに中心静脈域で最も速かった。30%エタノール群では、赤血球の速度は上昇する群と下降する群が認められたが、40%エタノール群では、60分後には全例において赤血球の速度は投与前値を下回った。また、経胃的に20%エタノール及び40%エタノールを急性投与し、門脈圧、動脈圧および中心静脈圧を経時的に60分間測定した。コントロール群では門脈圧の上昇は認めなかったが、20%及び40%エタノール投与群では全例に門脈圧の上昇を認めた。平均動脈圧及び中心静脈圧はコントロール群、20%及び40%エタノール投与群のいずれも有意な変化を認めなかった。40%エタノール投与群で門脈圧の上昇にもかかわらず、肝類洞での赤血球の速度が低下したことは、高濃度エタノール投与下では肝類洞で血流障害を惹起するなんらかの機序の存在することが示唆された。
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