研究概要 |
成人呼吸窮迫症候群は肺微小血管壁透過性亢進に基ずく肺水腫を主体とする病態であるが,この病態に白血球遊走因子の関与が推測されている。ロイコトリエンLTB_4は強力な白血球遊走因子であるが,同時に多核白血球からの水解小体酵素の放出,プロスタグランディン(PG)の産生,活性酸素の産生などの作用を持っている。 平成3度,LTB_4が灌流液中の多核白血球の存在下に家兎摘出灌流肺の微小血管壁透過性を亢進することを明らかにしたが,平成4年度はその病態生理学的メカニズムを解明する目的で,以上の実験を行った。 家兎肺を摘出灌流し,灌流液中に多核白血球(2-3 x 10^8個)を投与し,さらにLTB_4(5μg)を投与し,血管透過性を評価し,また灌流液中の好中球エラスターゼと,6-Keto PGF_1α および TXB_2を測定した。また,インドメタシンあるいは好中球エラスターゼ拮抗薬を前投与した群についても同様の項目について測定した。 その結果,LTB_4投与により肺微小血管壁透過性は亢進し,灌流液中の好中球エラスターゼ活性も有意に上昇したが,6-Keto PGF_1α および TXB_2は上昇しなかった。インドメタシンの前投与はLTB_4による肺微小血管壁透過性亢進を抑制せず,好中球エラスターゼ拮抗薬は肺微小血管壁透過性亢進および灌流液中の好中球エラスターゼ活性を有意に抑制した。 以上より,LTB_4による肺微小血管壁透過性亢進は好中球由来のエラスターゼが関与していることが推測された。
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