研究概要 |
肺小細胞癌は神経内分泌系の性質を有し,臨床的悪性度も高い事から注目されている。その細胞表面にはクラスター1と呼ばれる抗原が豊富に発現しているが,近年,神経細胞接着分子(N-CAM)であることが明らかとなり,特に肺小細胞癌の悪性度,転移との関連で興味がもたれる。我々は,まずこの肺小細胞癌に発現するN-CAMの詳細を明らかにすることを目的とした。 当研究室で樹立したヒト肺小細胞癌培養株に対するマウスなGI型モノクローナル抗体ITK-2を作成した。この抗体は肺小細胞癌及び神経内分泌原の正常組織や腫瘍に特異性を示し,その認識抗原は肺小細胞癌細胞膜表面に発現する145KDaの糖蛋白で,N-CAMであった。次に,ヒト筋型N-CAMの一次構造を参考にCDNAプローベをRT-PCR法を用いて作成し,20種類の肺小細胞癌培養株を中心にサザン・ノザン法による検討を行った。前者では特に異常を認めず,後者ではいずれの培養株も6.2KbのmRNAのみを発現していた。すなわち肺小細胞癌ではN-CAMは6.2KbのmRNAおよび145KDaの糖蛋白として発現することを明らかとした。 この肺小細胞癌に発現する145KDa N-CAMijoformの全一次構造を決定するため,当研究室で樹立した培養株OS2-RよりCDNAライブラリーを作成した。このライブラリーを前述のプローベを用いてスクリーニングしたところ,6個の陽性のクローンを得たが,このうち2クローンをシークエンスすることにより全長のCDNA塩基配列を決定した。その結果VAIEマクソンと呼ばれる30塩基対の構造を欠落することと,アミノ酸置換を伴わない一塩基置換が存在することの2点を除けば,神経等細胞腫に発現する140KDaN-CAMisoformの一次構造と基本的に同一であった。
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