研究概要 |
1.本症患者の実態調査:全国56施設に常染色体劣性遠位型筋ジストロフィー症(三好型)についてのアンケート調査と本邦の過去15年間における文献検索を行い,平成3年と4年で54家系,75例の本症症例が確認された。地域的には北海道,沖縄を除き全国的に存在するが,四国地方9家系18例,兵庫県6家系14例と多く,東京都,5家系,5症例,などであった。発症年齢は9歳〜36歳,平均20.7歳で,男女比は1:0.97,分離比は0.24,浸透率は1.0と計算された。突然変異率は2.2×10^<-6>であった。臨床的には,近位筋が比較的早期より萎縮する症例や萎縮の軽い筋に筋球がみられる例,さらに本症に特徴的な起立様式があることなども新しく明らかになった。脂肪肝の合併も指摘されている。最近,CT,MRIなどの画像にて主として屈筋の萎縮像が明らかに示されている。 2.原因遺伝子の存在染色体と染色体上の局在部位:自験の2家系に染色体異常が認められた。IT家系では,発端者に第16染色体の長腕に異常(16qh(+))があり,同じ異常が母と母方の叔父4名と叔母1名にもみられた。この家系では母と娘(1人)には血清CK値の軽度の上昇が認められ,本症遺伝子のヘテロ接合体と考えられた。本染色体異常と本症の原因とが関係あるとは現時点では断定できないが,発端者は父方の本症遺伝子と母方の上記染色体異常関連の本症遺伝子とのホモ接合体となり発症した可能性も考えられる。別のAy家系で第15染色体異常,inv(9p^+q^-)が発端者とその母に認められた。 3.遺伝子解析:IT家系の発端者の白血球DNAについて,第16染色体の動原体に近いプローブ(pHuR195)を用いてサザンブロットによりDNAの欠失,重複などの検討したが,このプローブを用いた限りでは異常所見は検出できなかった。Ay家系については適当なプローブを検索中である。
|