研究概要 |
(1)CO2負荷による脳循環動態変動時における青斑核ニューロン活動電位の反応性:呼気終末CO2濃度は5%CO2吸入開始前 4.7±0.1%であったが、吸入開始直後から有意な増加を示し、吸入中止直前には6.7±0.2%と最大値に達した(p<0.01)。一方、青斑核ニューロン活動電位の放電頻度も5%CO2吸入開始直後から増加傾向を示した。さらに40秒後には放電頻度の増加は有意となり、50秒後には吸入開始前の147±22%と最大値を示した(p<0.05)。2分間の5%CO2吸入終了後、放電頻度は一過性に減少傾向を示した後、再び吸入開始前のレベルに復した。 (2)一側青斑核電気刺激時の大脳皮質脳血液含量(CBV)の変化:猫を腹臥位とし、同心円刺激電極をstereotaxicに一側青斑核に刺入し、120秒間の電気刺激(3V,3msec,20Hzあるいは50Hz)を行った際、両側ectosylvian gyrusの大脳皮質下に微小電極を挿入し、脳表に装着したsilicon photodiodeからなる光電装置を使用して記録したCBVは、刺激前6.3vol%であったが、刺激80秒後0.14±0.04vol%の有意な低下(p<0.05)、100秒後0.15±0.05vol%の有意な低下(p<0.05)、120秒後0.15±0.03vol%の有意な低下(p<0.01)を認めた。 (3)クモ膜下出血時の青斑核ニューロンの活動電位変化 クモ膜下出血作成直後に青斑核ニューロンの活動は一過性に強まったが、その後10分後より次第に活動は弱まり、40分後には青斑核ニューロンの活動電位の発射数はクモ膜下出血前の64.6+12.9%に減少した。それに比して、頸部交感神経節前線維の活動電位の発射数は10分後にクモ膜下出血前の186.9+51.4%に増加した。また、40分後にはクモ膜下出血前の368.5+146.7%に増加した。 (4)microdialysis法による脳内カテコールアミン系物質の連続的測定に関する基礎的検討: オートサンプラー(エイコムM-231-401)にて連続的に検体を採取し、その微量検体をmicrodialysis用HPLC(エイコム製)によりモノアミン分析システムを介し、カテコールアミン類とその代謝産物を測定した。移動相の工夫によりnorepinephrine,dopamine,DOPAC,HVA,serotonine,5-HIAAなどの同時測定に成功した。 大槽内に自家血0.3mlを注入し、実験的くも膜下出血を作成し、その前後のカテコールアミン類とその代謝産物の経時的変化の検討は、今回施行しえたのは少数例ではあるが、脳内カテコールアミンはクモ膜下出血前後で有意な変化を認めなかった。
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