研究概要 |
心筋のL型Ca電流は膜電位にみならず細胞内外の様々な因子による調節を受け細胞機能の発現に重要な働きを果たしている。これらのうち細胞内Ca濃度([Ca]i)の増加はL型Ca電流を不流を不活性化させる一方,[Ca]iの少量の増加は逆にCa電流の増強をもたらし得ることが示されている。しかしどのような[Ca]iのレベルでこれら2つの相反する効果が発現するかは不明であり,両者の相互関係やその機序についても不明な点が多い。そこで本研究ではコラゲナーゼ処理によるモルモット単離心室筋胞を用し,fura2による[Ca]測定と同時にBa^<2+>をcharge carrierとしてcell attatch法によりL型Ca電流のsinale channel currentを記録し,[Ca]iによるL型Ca電流の調節の詳細を検討した。140mM-K^+の灌流液で細胞を脱分極させ,細胞外液のCa濃度を調節することで[Ca]iを可逆的にコントロールすることが可能であった。[Ca]iが静止時の約2倍を越えるレベル(R340/380〜0.4,1.8mMのCa^<2+>を含むTyrode液で40mMのKC1により細胞を脱分極させた時の[Ca]iに相当)に上昇させるとCaチャネルのconductanceは不変のまま開口確率の増加が認められ,活性化閾値付近の電位ではその増加率は数倍に及んだ。更に[Ca]iを増加させ細胞収縮の閾値より僅かに低いレベル(R340/380〜1)に至るとチャネル開口は逆に抑制された(Ca^<2+>-dependent inactivation)。[Ca]i軽度増加によるチャネル活性の増強効果は一旦成立すると[Ca]iをコントロール値に再度低下させても数分間は持続する性質をもち,また一過性に不活性化を引き起こすような[Ca]iの上昇があってもなお持続し得た(memory効果)。single channel currentのkineeticsの分析では[Ca]i増加による開口確率の増大には1.開口時定数の増大,2.閉口時定数の減少,3.null sweepの減少,4.mode-2-sweepの増大など複数の機序が関与しておりこれらの相対的寄与は電位により異なっていた。本研究はL型Ca電流の[Ca]i依存性を初めて直接,かつ定量的に示したものである。
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