雄性Wistar rat用いて一側腎動脈狭窄およびAVシャントによる心不全ラットを作成した。Captopril投与群では未治療群に比べて、血圧、左室重量の有意な低下が認められた。左室乳頭筋を用いたisometric con-tractionによる心収縮力としてのactive tension、+dT/dtmaxおよび-dT/dtmaxはcaptopril群において改善傾向が認められた。左室myosinisoenzymeに関して、未治療群ではV3が優位であったが、治療群においてはV3の減少、およびV1の増加といった有意な変化を認め、captopril投与により正常ラットの構成比率に近づいた。しかし心筋の線維化の指標であるhydroxyprolineは未治療群とcaptopril群とにおいて差を認めなかった。Prazosin 30mg/LおよびISDN 300mg/Lによる治療群では血圧の低下傾向を認めたが、左室重量の低下は認められなかった。Indomethacinにてprostaglandinをブロックしたcaptopril群では、未治療群に比べて一過性に降圧がみられたが、その後降圧効果は認められなくなり左室重量の低下も認めなかった。左室乳頭筋での心収縮力でもそれぞれの群には差はなかった。左室myosin isoenzymeに関してもV1およびV3の構成比率に有意な変化を認めなかった。 これらの結果より心不全モデルラットにおいて、Prasocin、ISDNといった血管拡張剤を用いてafterloadおよびpreloadを低下させるだけでは、心不全予防効果としては十分ではないように思われた。またcaptoprilは単独では効果があったが、indomethacinを併用してprostaglandinをブロックするとcaptoprilの効果が減弱したことより、ACE阻害剤の心不全予防効果発現のメカニズムに、angiotensinIIに加えてprostaglandinが関与している可能性が示唆された。ただしindomethacinの投与中、両者をfree drinkingで与えたためcaptoprilの投与量がやや低下したことを考慮する必要がある。今後投与方法を含め、心筋組織renin-angiotensin系に対するACE阻害剤の直接作用も検討する必要があると思われる。
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