研究概要 |
運動誘発喘息の発生機序にペプタイドロイコトリエンがどの様に関与するのか?また、その尿中排泄量と発作時の重症度や気道収縮度にはどんな関係があるのか?以上の2点について検討するために、運動誘発喘息の既往のある重症10名、中等症7名の喘息児にトレッドミル法にて定量負荷をかけた。前後にpeak expiratory flow rate(PEFR)を測定し、負荷直前と負荷後2時間までの採尿して尿中ペプタイドロイコトリエンを筆者等の考案した改良法にてRIAで測定した。その結果として、以下のような結果が得られた。 [結果1]:重症グル-プでは、尿中ペプタイドロイコトリエン排泄量は、28.6±28.9から48.6±41.2各ng/mmole creatinineへと有意に増加したが(p<0.05)、中等症グル-プでは尿中排泄量には変化がなかった。 [結果2]:尿中排泄量は10名で増加し、内8名は重症グル-プであった。また、7名で減少し、内5名は中等症グル-プであった。主加者と減少者のPEFRの低下率には有意差があった(57.6±21.0vs28.2±11.2%,p<0.05)。 [結果3]:PEFRの低下率と負荷後の尿中排泄量との間には、有意な相関はみられなかった。 以上の成績は、少なくともある種の運動誘発喘息発作の発生機序にペプタイドロイコトリエンが関与していることを示しているものである。特に、重症グル-プでの関与が明らかになったことは興味深いと思われる。 ただし、当初の研究目的に含まれていた健常小児および健常成人での検討は本年度中にはおこなえなかった。また、採尿時間等の関係で中等症での尿中ペプタイドロイコトリエン排泄増加を見落とした可能性もある。
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