研究概要 |
小児急性リンパ性白血症のうち細胞形態、細胞表面マ-カ-、染色体検査がなされ、経時的にDNAの抽出が行なわれている15症例を対象とした。初診時のDNAについて免疫グルブリン遺伝子(JH,Cκ,Cλ)とT細胞レセプタ-遺伝子(TCRα,TCRβ,TCRγ)の再構成をサザンブロット法で検討した。表面抗原検査よりB細胞起源の症例はすべて免疫グロブリン遺伝子の再構成が認められたため、個々の症例について免疫グロブリン重鎖の可変領域(V_H)と結合領域(J_H)のDNAをプライマ-として白血病細胞特異的CDRIII遺伝子のDNA塩基配列の決定を試みた。しかし、PCRを用いた白血病細胞特異的CDRIII遺伝子の塩基配列の決定はPCRの感度によるものか、かなりの夾雑物のために1例のみCDRIIIの塩基配列が決定出来た。本症例において初診時より保存されたDNAを用いたPCR法での残存白血病細胞の有無を1年の経過で検討した。形態学的、染色体検査では完全寛解を維持しているものの、PCRでは絶えず陽性を示していた。本方法の有用性については今後の臨床的経過との関係を詳細に検討しなければならないが,個々の症例におけるCDRIIIの申基配列の困難さはB細胞系ALLの残存白血病細胞の検出には限界があるものと思われた。 一方、T細胞起源のALL6例ではT細胞レセプタ-遺伝子の再構成が5例で認められた。近年、TーALLよりtalー1遺伝子がクロ-ニングされ、小児TーALLでは約25%に再構成がみられる。talー1遺伝子の塩基配列は決定されているので、これをもとにプライマ-の作製を行なった。我々のTーALL症例でもtalー1遺伝子の再構成の認められる症例ではこのプライマ-を用いてPCR法での残存白血病細胞の検出が可能と考え、現在あわせて検討を継続している。
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