研究概要 |
対象と方法:9名のうっ血性心不全(以下、心不全)小児(年齢範囲:4ヶ月〜9歳)を対象とした。心不全の程度を臨床的に把握した後、ヘパリン採血し、リンパ球交感神経β受容体数(以下、β受容体数:fmol/mg蛋白)および赤血球膜Naポンプ受容体数(以下、Naポンプ受容体数:nmol/l cells)を、各々^3H-dihydroalprinolおよび^3H-Ouabainを用いるcompetitive binding assay法で測定した。その後、ジキタリス療法を開始し、心不全が改善した時点で、血漿ジゴキシン濃度、β受容体数およびNaポンプ受容体数を測定した。成績は平均値と標準偏差で示し、t検定で二群を比較した。対照として、同年齢群の健常小児の値を用いた。 成績: 1)β受容体数は、心不全小児が健常小児より有意の低値を示した(8.7±3.5対16.1±5.3,P<0.01)。 2)心不全改善後、β受容体数は有意に増加したが(12.7±4.6,P<0.01)、健常小児と比較すると、依然低値であった(但し、統計学的な有意差はなかった)。 3)Naポンプ受容体数は、心不全小児が健常小児より低値を示したが、有意差はなかった(6.9±2.8対7.4±2.1,P>0.05)。 4)ジキタリス剤投与後、Naポンプ受容体数は有意に減少したが(4.1±1.3,P<0.01)、血漿ジゴキシン濃度とは相関しなかった(γ=-0.4112,P>0.05)。 結論:β受容体数は心不全の程度およびジギタリス療法の効果を反映したが、Naポンプ受容体数は必ずしも心不全の状態を反映しなかった。したがって、心不全の病態の把握や治癒効果の判定にβ受容体数の測定は有用と考えられた。一方、Naポンプ受容体数の測定は、当初予測したほどの有用性は乏しいと考えられた。
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