研究概要 |
平成3年度,4年度および5年度の研究において以下の結果および知見を得た. 1.腎機能障害を伴う逆流性腎症例では光顕所見の結果から糸球体濾過量の低下は糸球体硬化病変,一部は尿細管と連結していない糸球体の存在および尿細管・間質病変の結果であると推測される. 2.残存微少変化糸球体に対する主に過剰負荷によると推測される糸球体肥大化現象の存在を定量的に証明した. 3.硬化病変形成に関与する細胞外基質(とくにIII,V型コラーゲン)の糸球体硬化部やボウマン氏嚢との癒着部に存在することを免疫染色にて確認した. 4.進行性腎機能低下例は尿蛋白排泄量の増加を伴う.また,尿蛋白の質的分析の結果,糸球体硬化病変(とくに分節性硬化)の形成例では糸球体性蛋白尿であるアルブミンや高分子蛋白(γグロブリン)の排泄が増加し,間質病変の進行例では尿細管性蛋白尿(低分子蛋白尿)の排泄増加が認められる混合性蛋白尿である. 5.血清クレアチニン値の逆数を腎機能の指標として経過観察した結果,とくに治療せずに自然経過を観察した症例と食事療法(低蛋白・低燐食)に加えて少量のアンギオテンシン変換酵素阻害剤を併用した症例において経年的腎機能低下を比較すると,自然経過例に比して治療例では腎機能の低下程度が有意に軽微である.また,経過観察中平均血圧が低下した群と不変あるいは上昇した群の比較では,平均血圧低下群が不変あるいは上昇群に比して1/血清Crの傾きが有意に緩除である.
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