研究概要 |
1.人工透析患者血清中の〓痒惹因子〓痒性皮膚疾患として人工透析を受けている慢性腎不全患者をとりあげ,血清中の起痒因子の有無について検討した。ラット腹腔からマスト細胞を調整し,マスト細胞浮遊液に透析患者血清または正常秀血清を加え,ヒスタミン遊離量を測定した。その結果,透析患者のうち〓痒を訴えるものでは,血清中にマスト細胞からヒスタミンを遊離させる因子を多く含有することがわかった。ヒスタミン遊離因子の性状は不明であるが,透析患者の〓痒は,腎不全または透析中に生じるこの血中因子によって部分的に引き起こされることが示唆された。 2.皮膚神経線維の病理学的所見最近開発された神経線維特異抗体を用いた組織化学的研究によって皮膚内の神経線維の分布が明瞭になった。正常皮膚では神経線維は表皮内および表皮直下に多く分布しており,〓痒性疾患である痒疹やかゆみを伴う乾癖皮膚では神経線維の分布密度に異常がみられた。 3.紫外線療法の奏効機序紫外線療法は,痒疹,アトピー性皮膚炎,人工透析に伴う皮膚〓痒などに奏功するが,その作用機序は局所的な機序と全身的な機序によることがわかった。局所機序としては,紫外線照射は適当な照射量の範囲内ではマスト細胞の脱顆粒現象を抑制した。また,紫外線は神経線維に傷害を及ぼした。全身機序としては,マスト細胞からのヒスタミン遊離を促す血清因子に働いて,これを不活化することがわかった。
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