研究概要 |
伝染性軟属腫(MC)の原因である伝染性軟属腫ウイルス(MCV)DNAを制限酵素処理後,アガロ-スゲル電気泳動法により解析し,本邦におけるMCの多様性の有無,臨床像との相関を調査し,外国例と比較し,伝染経路の推定における本解析法を有用性を検討した。 対象・方法:MC患者92例より採取した材料より全細胞DNAを抽出し,制限酵素BamHI,HindIII,ClaIにて切断後,1%アガロ-スゲルにて電気泳動を行い,エチジウムブロマイド染色後写真を撮影した。 結果:4種の異なったMCV DNA切断パタ-ンがみられ,それぞれMCVー1,2,3,4と呼称した。検出頻度はそれぞれ69%,4%,25%,2%であった。小児例のほとんどと成人女性の全例では,MCVー1,3のいずれかの感染がみられ,その臨床像は典型的で両者間に差異を認めなかった。MCVー2は4例と少なかったが,臨床像はMCVー1,3と同様であった。MCVー4は2例の成人男性(うち1例は免疫抑制患者)にのみ検出され,臨床像も個疹が大きく特異であった。同一症例からは,採取部位・時期が異っても常に同一のタイプが検出され,MCVの安定性が示された。 考按:MCVー1,2は外国の報告と同じタイプで,MCV3,4は今回初めて検出されたタイプであった。このうちMCVー3はMCVー1とDMA切断パタ-ンが酷似しており,MCVー1の亜型と推定された。MCVー4は通常MCのみられない患者層に検出され,免疫不全との関連も示唆され,感染経路も不明であり,きわめて特異なMCVと考えられた。またMCV DNAの安定性が示されたことから,本解析法はMCの感染経路の推定に有用と思われる。
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