研究概要 |
肺の密度で容量が約5000mlの肺ファントムを試作し、その中に直径0.5cm,1.0cm,1.5cm,2.0cm,2.5cmの球線源にTl-201を封入して挿入し、肺ファントム(バックグランド)との放射能濃度比が10対1になるように設定し、3検出器型GCA-9300A SPECT(東芝製)で球線源の検出能と放射能の濃度比の定量的測定を検討した。放射能濃度比が10対1の条件下では0.5cmの最も小さな線源を始めとして全ての球線源が描出され、測定濃度比は直径0.5cmで1.85,1.02cmで1.86,1.5cmで2.19,2.0cmで3.52,2.5cmで4.58といずれも実際値よりも低値であり部分容積効果が認められた。この結果から小さな病巣の定量測定に際しては補正することが必要であることが判明した。しかし、肺病巣とバックグランドの放射能濃度比が10対1もあれば0.5cmの小肺癌の検出が可能であることも判明した。この事実の判明は大きな成果であると思われる。肺癌が疑われGCA-9300A SPECTを回転半径20-22cmで128×128画素、6度ステップで1方向50秒、360度の収集で15例に施行した。臨床成績は静注3時間後の画像で肺悪性腫瘍11例中10例(91%)が明瞭に陽性描画された。良性病巣は4例中2例が陽性であった。悪性病巣、良性病巣いずれも主径の大きい病巣が良く描画される結果であったが、1.0cm程度の肺癌も描出されることが判明した。しかし、当初期待していた良性・悪性の鑑別、肺癌の組織診断は病巣が2.5cmですでに部分容積効果が認められるので今後吸収補正、コンプトン散乱線補正、病巣の大きさによる補正を検討する必要があることが判明した。前年度の基礎的臨床的成果の一部は研究報告として論文として発表した。一部は国際誌に発表予定であるが、最終成績は別に論文発表の予定である。
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