研究概要 |
ECT(エミッション・コンピュータ断層)受容体イメージング解析法の確立のため,抗精神病薬投与動物を用いたインビトロ及びインビボ実験並びにRI標識化合物合成の基礎的研究を試み以下の結果を得た。 1.抗精神病薬投与ラット(ハロペリドール,クロザピン投与)におけるインビトロ法(インビトロ受容体オートラジオグラフィ法)では,D1,D2,5-HT2のいずれの受容体でも抗精神病薬による受容体占有率の変化は認められなかった。 2.一方,インビボ法(組織摘出法)では,著明な受容体占有率の変化が認められたのみならず,定型抗精神病薬(ハロペリドール)と非定型抗精神病薬(クロザピン,リスペリドン,RMI)により相違が認められた。すなわちD2受容体占有率は,定型抗精神病薬の方が高値を示したのに対し,D1,5HT2受容体占有率は非定型抗精神病薬の方が高値を示した。これらの結果は臨床的な治療効果(有効性及び副作用)とよく一致しており,インビボ法はより優れた抗精神病薬を開発する方法として優れていると考えられた。なお,速度論的解析は,受容体占有率による評価より多くの情報を提供すると共にECTイメージング解析に応用可能と考えられ,速度論的解析について現在検討中である。 3.SPECT用Tc-99m標識薬剤の合成に必要な二官能性キレート剤としてのジアミノジチオール(DADT類)は,従来の方法では最終段階で苛酷な反応条件で還元するためDADT類自体を化学反応させてしまう場合があった。そこで合成法の改良を加え,化学的に不安定な官能基(エステル等)を有するDADT類の合成を行ない動物実験等で良好な結果を得た。 以上よりインビボ系の動物実験はECT受容体定量的解析の基礎的研究に有用と考えられた。
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