研究概要 |
Cordellら('84)の2重免疫酵素学的標識複合体(APAAP)を用いるin situhybridization(LarssonとHougaard,'90)をラットの青斑核(LC)の交互連続cryostat切片(6μm)に適用し、serotonin(5ーHT)合成酵素tryptophan hydroxylase(TPH)mRNAがLCの全域にわたって小型及び中型神経細胞の約50%に検出できる事を見出した。この方法の特異性はNorthern blot hybridizationで検定した。なお、このmRNAのシグナルはLC膜内側端に近い少数の中心灰白質の神経細胞にも認められた。 LC内在性の神経細胞分5ーHT合成能は現在のin situ hybridizationの結果のみならず免疫細胞化学的実験の所見からも強く支持される。即ち、Zamboni's固定のcrycostat(6μm)の交互連続切片のセットを、それぞれ5ーHT抗体又は、チロシン水酸化酵素(TH)抗体を一次抗体としてPAP法で(Sternberger,'86)で免疫染色し、又、5枚毎にcersyl violet染色して神経解剖学的にも対比検討した。5ーHT免疫反応性は、術前にpargylineと5ーhydroxytryptophan(5ーHTP)を腹腔内投与すると多数のLC細胞に検出されたが、その分布において、TH免疫反応性のLC細胞と完全に一致した。交互連続切片の免疫染色による対比で、神経伝達物質5ーHTとNAの共存が、ラットのLC神経細胞に強く示唆された。(1)ことに5ーHTの合成酵素TPH mRNAの脳内の存在証明の報告はまだ乏しく、5ーHT合成能は松果体、縫線核や最後野(AghajanianとGallager,'75;ChanーPalay,'76;Nishida et al.'85)だけにこれまで限定されてきた。更に、(2)NAと5ーHTの共存はSteinbusch('84)以来、まだ報告されていないLCの知見である。 なお、LCの腹内側端に近いところまれに少数の5ーHT細胞がありTPH mRNAを示す表現見は、これらの細胞が背側縫線形に由来するとの従来の仮説(SladekとWalker,'77)を支持している。
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