研究概要 |
睡眠・覚醒リズム障害により不登校・登校拒否状態あるいは学業不振となるものが,思春期・青年期にどの程度存在し,またどのような要因が発症に至らしめるのかを明らかにする目的で,本研究は開始された。 2年間のうち初年度は,わが国と同様に睡眠覚醒リズム障害の報告の多い米国との比較および共同の研究を可能とすべく,米国で思春期を対象にした調査研究の際に用いられたMontefiore Medical Center(New York)の質問表をわが国の実情に合わせて改訂し作成する作業を行った。質問は全部で26項目から成り,家族歴やうつ病評価尺度の簡単な項目ま含まれている。この質問表による調査を開始するに際し,調査への低抗を少くし,より協力が得られやすいようにするため,これまでの思春期発症の症例の治療効果を中心とした予備的調査を行うこととした。 第2年度に実施したこの調査では,予測したように早期に治療や対策を講じた場合は,その予後は良好であるものが多いことが明らかとなった。即ち,治療と経過の観察が充分に行われた症例に,事前に了解を得たうえでアンケートを送り,現時点での睡眠覚醒行動と社会適応を中心にした質問への回答が得られた症例について,治療前の状態との比較を行ったところ,睡眠・覚醒リズムの重症度および社会適応度ともに改善の傾向が見られ,とくに後者の改善率は有意に高かった。そして,初期治療への反応が良いものほど改善もよい傾向があり,早期に治療開始をすることが重要であることも示唆された。 これらの結果を呈示しつつ,当初の調査を進めつつあるが,分析対象とするに必要な例数が得られた時点で分析を行い,発生頻度と発症の要因を検討する予定である。なお,治療と予後に関する調査についても,平行して行っており,成人発症例との比較などひき続きその実態の研究を進めている。
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