本研究の目的は、覚醒剤後遺症に基づく精神病が精神分裂病の病態モデルとしてその慢性再発性の機構を解明するために、最適な実験動物を作成することである。 本研究の結果、脳内モノアミン伝達物質代謝に対する覚醒剤に慢性変化を指標にして、近交系マウスの系統間で比較したところ、従来焦点が当てられてきたドパミン神経系以外にセロトニンやアセチルコリン神経系にも変化が生じている系統が示され、系統間に特徴的な差異が示されたことが明らかにされた。 ついで、これらの中から特徴的な系統(NZB/NCrj、NZW/NCrjとその交配1代のCrj:NZBWF1ならびにC57BL/6NCrjの4系統:NZB、C57BLは、ドパミン神経系を中心とした慢性的な伝達物質放出異常が示された。NZWではドパミン神経系には変化がなくセロトニン、アセチルコリン神経系に慢性的な変化が示された)を選んで、覚醒剤の慢性投与〜断薬、覚醒剤のchallengeにおけるopen field testを繰り返し測定いた。覚醒剤投与によるopen field scoreの変化は、逆耐性を反映するhyperkinesiaの個体と、対照群の平均値よりも低値を示すhypokinesiaの個体が示された。これらの薬理反応は、覚醒剤投与量との相関の無いことも示された。 これらの結果に基づいて、これらのhyperkinesiaの雌雄個体同士、hypokinesiaの雌雄個体同士をそれぞれ交配し、選抜育種することにより、特異的な覚醒剤後遺症モデル動物を作成を開始した。 選抜交配の第2代目から、逆耐性動物の発現率が顕著に示されるようになり、選抜交配の4代目においてNZWの雌性動物では、親の特性が子に引き継がれることが示された。今後さらに、選抜育種を重ね、分子生物学的な解析を行う方向に進める予定である。
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