研究概要 |
近年増加傾向を示す閉塞性動脈硬化症などの閉塞性・狭窄性血管病変に対する新しい非手術的療法として,ウォータージェットを応用した血管形成術の臨床応用の可能性につき検討した。システムは高圧マイクロフィーダーをポンプとして用い,これに細径の試作カテーテルを接続して作成した。先端孔は直径0.1mmで先端吐出圧は10kg/cm^2が得られた。ヒト大動脈壁を用いた安全性の検討では,空中噴射により動脈壁全層に及ぶ強い変化が観察されたが,水中噴射では血管内壁の変化は軽度であり5秒間噴射でも内膜層の水泡性変化にとどまり,ウォータージェット噴射の高い安全性を示す結果が得られた。血栓性閉塞に対する検討では,雑種成犬に作成した血栓では臨床で見られる血栓より柔らかいためかウォータージェットは血栓中央に小孔を開けるのみであった。一方,臨床にて得られた硬化性・閉塞性病変に対する噴射では,まずアテローム変性への空中噴射において変性層の高い除去能が得られたが内膜下に破壊が進むと血管壁の解離が生じた。しかし水中噴射では水泡が形成されるのみであった。さらにヒト腸骨動脈完全閉塞例に対しては,空中噴射では30秒間の噴射でも直径約2mm程の小孔を生じたのみであったが水中噴射では20秒で対側まで貫通でき40秒噴射ではほぼ完全な開通が得られ水中噴射の有用性が確かめられた。ただ血管壁自体には無効であった。以上の結果より,破砕された組織小片の処理や病変に応じた至適吐出圧の設定や噴射される液体の選択などが課題として残されたが,ウオータージェットは正常血管壁への影響を軽度に保つ一方で血栓などによる閉塞性病変には強い破壊効果を示すことが判明し,この方法は閉塞性血管疾患に対する新しい非手術的な血管内治療法になり得る基本的能力を有していることが示され,またその特性上血管形成術のみならず血管内の清掃という新しい治療概念の導入にも寄与できるものと思われた。
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