研究概要 |
無腫瘤性乳頭異常分泌症における術前診断の向上を目的とし,潜血反応陽性を示した108例121乳管に対し分泌物細胞診,乳管洗浄細胞診,乳管造影,乳管内視鏡検査を行い,組織診断が確定した58例60乳管において各検査所見を対比検討した。また乳管内視鏡の改良を試みた。 研究成果:1).外径0.45mmの石英系内視鏡を改良し、通気機能をもたせた外径0.60mm,さらに耐久性に優れた0.65mmの乳管内視鏡を作製した。これによって約5〜7cmの末梢乳管まで観察可能となった。2).分泌物細胞診に乳管洗浄細胞診を併用することによって,癌の術前確診率はやや向上した。乳管造影は病変の部位診断のみならず多くの例で質的診断が可能で,癌は乳管径の不規則性変化を特徴とするものが多く認められた。3).乳管内視鏡所見上,癌は乳管内腔壁に沿う表層進展型病変を形成することが特徴的であり,組織学的には乳管内進展に併う癌細胞の不整な隆起性増殖に対応していた。また,乳管内乳頭腫は内視鏡上、主乳管もしくは比較的乳頭に近い乳管内に充実性腫瘤を形成することが特徴的で,組織学的には乳管内腔へのポリ-プ状隆起形態に対応していた。4).乳管内腔に進展する癌の内視鏡所見を把握し,内視鏡直視下に行われる微小検体採取法としてはチューブキュレット法が最も的確かつ容易な方法である。この手技の習熟によって,癌の術前確診率は大きく向上するものと考えられる。 以上の研究成果より,無腫瘤性乳頭異常分泌症例において分泌物細胞診,乳管洗浄細胞診,乳管造影と共に乳管内視鏡検査と内視鏡下チューブキュレット細胞診を行うことは、乳頭異常分泌の原因を診断すると共に乳癌の早期診断上重要な意義を有するものである。
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