研究概要 |
担癌者での自己リンパ球混合培養反応(AMLR)低下の機序についてクローンレベルで解析し、さらに胃癌のstageII・IIIで根治手術を対象とし、術直前のAMLRが平均値より高い群と低い群に分け累積生存率を比較した。非担癌者末梢血および胃癌患者脾臓においてAMLRにより誘導されたT細胞クローンを限界希釈法にて樹立した。非担癌者末梢血より4クローン、胃癌患者脾臓より1クローンを得た。その表面抗原はいずれもCD3+,CD4+,CD8-,TCRα/β+,TCRγ/δ-CD45R-,CD16-であった。これらのクローンはいずれも自己non-T細胞に対して強い増殖反応を示したが、非自己non-T細胞に対しては全く反応しなかった。自己non-T細胞に対する増殖反応は胃癌患者脾臓より得た3F6は、非担癌者より得たクローンのうち5B6を除く他の3クローンに比較し明らかに低かった。低濃度IL-2刺激(10U/ml)に対する反応性と固層化抗CD3抗体刺激に対する反応性はクローンにより異なっており、たとえば3E3はIL-2に対しあまり増殖反応を示さないにもかかわらず、固層化抗CD3抗体に対しては強い増殖反応を示した。しかし、いずれの刺激に対しても3F6すなわち胃癌患者より得たクローンは、非担癌者より得たすべてのクローンに比較し、その増殖反応は低下していた。さらに、健常人末梢血より得た自己反応性T細胞クローンである1G6はK562,KATO-IIIおよび非自己のPHA blastに対しては抗腫瘍活性を認めないが、自己のPHA blastおよびHLA-DR抗原が強く発現するDaudi細胞に対して抗腫瘍活性を示した。これに対し、胃癌患者脾臓より得たT細胞クローンである3F6は自己のPHA blastに対してのみ抗腫瘍活性を示した。自己PHA blastに対する抗腫瘍活性は抗HLA-DR抗体添加により抑制された。胃癌のstageII・III症例での検討では観察期間がまだ短いため有意差を認めないが、末梢血、脾臓ともAMLR高値群では死亡者はなく、生存率も良好であった。
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