1〉大腸癌組織発生に関する研究;家族性大腸腺腫症、非遺伝性大腸癌の手術切除標本より正常大腸粘膜、腺腫、癌組織を採取し、組織学診断を明らかにした。これらに関してCーKーras2遺伝子の点突然変異、GAP遺伝子の構造異常の有無、cーeb B_2の発現、P_<53>、DCC遺伝子領域の構造異常の有無を検討し、隆起型の腺腫の癌発生における役割について考察した。研究の一部をまとめすでに論文として発表した。 さらに症例を家族性大腸腺腫症53例より得られた350検体についても同様の研討を行ない、論文として報告した。 非遺伝性大腸癌症例に関しては、平担型早期癌と隆起型早期癌における原癌遺伝子の活性化の状況を進行大腸癌における状況とを比較する事により、近年臨床的に注目されている平担型大腸早期癌の発生田地に関する考慮を行ない検討している。 2〉大腸癌の転移性に関する検討;大腸癌の肝転移モデルとして、ヒト大腸癌培養細胞をヌ-ドマウス腸内に接種し、肝転移を作成した。培養細胞7種に関して同モデルを作成し、転移巣を採取した。培養細胞は低転性を示す2種と高転移性を示す4種に区別された。これらに関して、癌遺伝子産物、細胞間マトリクス構造、癌関連抗原の発現について検討し、現在高転移株の分る生物学的特性についての研究をすすめているところである。
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