研究概要 |
小腸移植の適応となる短腸症候群の症例ではしばしば肝障害がみられ,小腸と肝臓の同時移植が必要な症例が多く,また,臨床的には小腸と肝臓が同時に移植された症例では小腸単独の移植症例より免疫抑制が容易であるとされている。移植腸管で分泌される免疫グロブリンや免疫系細胞は肝臓に流入するため,小腸と肝臓の同時移植例では抗原性や免疫応答が変化する可能性がある。また,小腸移植どはgraftのパイエル板や腸間膜リンパ節に多くのリンパ球を含む。そこで,術後の腸管の粘膜防御機能の変化と細胞性免疫機能に重要な役割を果たすリンパ球の動態を検討した。ラットを用いて,Lewis-Brown Norway F1 hybrid(LBNF1)をdoner,Lewisをrecipientとした群をrejection(RJ)群,Lewisをdoner,LBNF1をrecipientとした群をGVHD群,GVHD群に0.32mg/kg/dayのFK-506を投与した群をFK群,isograft群をcontrol群とした。GVHD群ではgraftのPeyer板のBrdU labellingindexは30.6±9.2と有意に高値を示し,RJ群ではnativeの腸間膜リンパ節のDNA合成時間は有意に延長していた。RJ群ではgraftのIgGは高値をIgMは低値を示し,GVHD群ではgraftとnative腸管のIgG,graftのIgMは増加したが,native腸管のIgMとglucosamineは減少した。FK群ではIgCとglucosamineの変化は抑制されたが,IgMの低下は防止されなかった。BrdUをトレーサーとしたリンパ球動態の検討では,GVHD群のgraftからrecipientの肝臓と脾臓へのリンパ球の移行が認められ,脾臓のW3/25陽性細胞は移植後14日目で有意に増加した。さらに血液中のW3/25陽性細胞は移植後3日目に一旦減少した後,14日目には有意に増加することを明らかにした。
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