研究概要 |
ビ-グル犬5頭を用いて、頭蓋内にバル-ンを挿入して脳圧を高めることにより脳死状態を作成した。Cushing状態の異常な血圧上昇のあと、血圧は急激に低下して50mmHgとなり脳死状態に入ったがAKBR(血中ケトン対比)は1〜1.2に保たれた。脳死でAKBRが低値になるモデルとして、更に5頭を用いてド-パミン20μg/kg/分を投与すると,脳死後のAKBRは0.5前後に低下し,しかも血圧は120mmHg以上に保たれた。このもデルを4時間のあと、肝を摘出して潅流を行った。ヒト保存血を凍結血漿および低分子デキストランで稀死しヘマトクリット20%にして6時間の潅流を32℃にて行った。潅流開始後、KBRは一過性に1.0以上に上昇したが2時間以上では1.0以下となり6時間後には0.7〜0.5と低下した。これらの摘出潅流肝の移植を2頭に試みたが,肝な生着せず動物は6時間で死亡した。他の3頭は潅流終了後に肝エネルギ-チャ-ジの測定に使用したが,正常値が0.85以上であるべきところ0.75と低下していることが判明した。死体肝のViabilityがどの程度回復せしめ得るかを見る目的で、塩化カリウムを静脈注射して心停をおこさせたビ-グル犬3頭の摘出肝を同様の方法で潅流した。心停止後は当然肝エネルギ-チャ-ジは低下して0.5となったが、6時間後潅流終了時では0.8以上を示したのは1頭で他は0.6,0.7であった。両実験を通じて、脳死犬摘出肝,心停止犬摘出肝を潅流によりそのViabilityを向上せしめるには現在の潅流方法では不十分であることが判明し、現在その潅流法等の改善を行っている。一方,同時進行で行った、同潅流法を,UW液及びFC emulsionに変更した冷却潅流実験では、肝エネルギ-チャ-ジおよび潅流液のケトン体比は良好に保たれることが判明し72時間の保存が可能であることが示唆された。また脳死状態の時点で、T_3とバソプレッシンを使用することによりAKBRは上昇することが判明した。
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