研究概要 |
外科的に切除された進行大腸がん119例と,内視鏡的に切除された大腸ポリープ239個におけるp53発現を免疫組織学的に調べた。これらの標本をマイクロウエーブ照射によって迅速固定したのち,そのパラフィン切片に対してPAb1801を一次抗体とするABC法をおこなったところ,進行癌では72例(60.5%),腺腫内がんのがん巣では 28個(82.4%)でがん細胞の核内にp53が検出された。がんを内包しない良性の腺腫では,陽性率は低く,191個中31個(16.2%)でごく一部の腺管に限局した発現がみられたのみである。臨床病理学的事項からみると,肝転移をともなう進行がん例でp53陽性率が高くなっているほかは,とくに組織型や深達度などのパラメーターと相関性をみとめなかった。また,良性腺腫内に発現するp53陽性腺管は,構造異型の面では周囲の陰性腺管と差異をみとめなかったが,個々の細胞の核面積をcomputerで算出してみると,核に膨化傾向のあることがしめされた。一方,最近大腸のがん好発病変として注目されている扁平隆起を21個収集してp53の発現を調べたところ,がんを内包した扁平隆起では10個中7個(70.0%),腺腫と診断された扁平隆起では11個中 2個(18.0%)にp53の発現がみられ,その頻度は一般のがんおよび腺腫での発現頻度と類似していた。組織切片よりDNAを回収してp53遺伝子の3'flanking region 90bpをPCR増幅し,LOHを検索する実験では,最低200μm^2の微小切片からのDNAを増幅して検討可能であることが分かり,現在までのところ,免疫染色の結果とLOHの検討結果はたいへん良好な一致をしめしている。
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