研究概要 |
I.シュークリーム負荷試験の確立 46名の健常者につき1)生クリーム35g含有シュークリームを早朝空腹時に経口摂取させ2)摂取前,1,2,および3時間後に5ml採血.3)血清TG値を酵素法により自動分析測定した.殆どの例において,血清TG値は2時間目まで漸増傾向にあり,弐字間値を負荷前値で除した比(トリグリセリド吸収指標TGAI)が脂肪の消化吸収能を見るうえで妥当であると考えた.このTGAIの平均値±標準偏差は1.47±0.06であった. II.各種消化器手術後における脂肪消化吸収能の比較 胃癌または消化性潰瘍の為に胃部分切除術を受けた18例,胃全摘11例,膵頭部領域病変のため膵頭十二指腸切除術(PD)を受けた16例につき,本試験を行った.胃全摘およびPDでは健常者に対してTGAIは有意に低下していた(p<0.02) III.脂肪消化吸収能の経時的推移 各手術後早期(平均1.5月),安定期(6月),遠隔期(1年以上)の3期で本試験を行った.胃切除のうち良性疾患に対して行ったものでは遠隔期にはほぼ健常者と同様の脂肪消化吸吸収能に回復していた.PDの中でも胃を温存したものでは胃切除PDに比べて回復が良好であった. IV.考察と今後の展望 本シュークリーム負荷試験は従来より行われてきた脂肪消化吸収試験の中で,血液中カイロミクロン算定法やバター負荷試験(血清濁度測定法),エステル化脂肪酸測定法と原理的には同様のものである.バタ-負荷試験では負荷バター量が30gと多いことや,血清濁度をみる測定手技がこれら検査の臨床普及に障害となっていたと思われる.これに対し,本法では生クリーム中の脂質は11gと比較的少なく,クリーム状のため美味しく食べられ,消化管で容易に乳化されると考える.血清TGの測定も臨床検査室の自動分析器でルーチンに測れる.今後生クリームの検査診断薬としての基準化,並びに多数臨床例のデータ解析が望まれる.
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