研究概要 |
[研究目的] 本研究の目的は,食道組織中に男性ホルモン受容体蛋白が存在すること,および男性ホルモン受容体蛋白阻害剤が実験食道癌にたいして発癌抑制効果,治療効果,発癌予防効果が認められることを明らかにし,食道癌治療におけるホルモン療法を確立する点にある. [研究実績] AMN10週投与による発癌率におよぼすFlutamide10週投与の効果を検討した結果以下の結果を得た. AMN10週投与時の発癌率は非去勢雄性ラットで54.5%(n=11),去勢雄性ラットで27.2%(n=11)であり,AMN10週投与後10週経過時の発癌率は非去勢雄性ラットで82.7%(n=29),去勢雄性ラットで62.5%(n=32)であり,AMN10週投与後Flutamide10週投与時の発癌率は非去勢雄性ラットで60.6%(n=32),去勢雄性ラットで47.0%(n=34)と,Flutamideを投与した去勢雄性ラットの発癌率がFlutamideを投与していない非去勢雄性ラットに比べ有意に低値を示した(P<0.01). [おわりに] 今回行った化学発癌物質を用いた実験食道癌発癌実験ならびに抗男性ホルモン剤を用いた発癌抑制実験の結果,AMN投与ラット実験食道癌において抗男性ホルモン剤の一つであるFlutamideの発癌抑制効果が認められたことから,食道癌に対する治療効果が抗男性ホルモン剤に認められる可能性が示唆されたものと考えられた.食道癌の新しい治療法を考える上において,抗男性ホルモン剤を用いた治療実験を進めることは今後の重要な研究課題であり,意義のあるものと考えられた.
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