研究概要 |
私どものこれまでの検討により,脳虚血急性期における局所の微小循環障害が血漿灌流血管長の減少として定量的にとらえられること,および血栓溶解剤である組織性プラスミノーゲンアクチベーター(t-PA)がこの微少循環障害を改善することが明かとなった。t-PAのこのような効果は微小虚環障害の発生機作として微小血管内の血栓形成が関与することを示唆している。私どもは血栓形成の原因として血管内皮細胞の障害による抗血栓活性の減少を想定し,脳虚血にともなう活性酸素の産生が内皮細胞障害をもたらす可能性を考えた。これを明らかにするためラット局所脳虚血モデルにおいて活性酸素のうちスーパーオキサイド(0_2^-)を選択的に消去するスーパーオキサイドディスミューテイス(SOD)を投与し,微小循環障害に与える影響を検討した。その結果,SODの投与は虚血巣の血漿灌流血管長の減少を有意に抑制し(p<0.01),また組織学的障害をも軽減することが明かとなった。 従来,臓器虚血においては産生された活性酸素が直接組織障害をもたらすことが想定されがちであったが,本研究で得られた知見は,活性酸素が微小虚環障害をもたらし,その後二次的に組織障害をきたす要因となりうることをも示唆している。従って活性酸素の消去は虚血性脳損傷の発生機作から考えると,より原因治療的なまのといえる。本研究では遺伝子組換えによるヒト型SODを用いており,臨床的にも心疾患患者への投与が試みられており,虚血性脳損傷治療薬として臨床応用しうるものとして期待される。
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