まず最初に、脳内に外来遺伝子の導入を計るのに必要な最適条件を見いだすべく、その基礎的検討をおこなった。pRSVLプラスミドDNAを用いて、手術的に容易な、マウス大腿筋への外来遺伝子の導入をこころみた。この際、合成陽性イオンリポソームであるリポフェクチンで処理する方法がもっとも効率の良い方法であることが明らかになった。さらに、このプラスミドDNAをリボフェクチンで処理する際、pRSVLプラミスドDNAを20%のフルタトースに溶解して、CaのキレーターであるEGTAを添加したものをマウスの大腿筋にマイクロシリンジを用いて注入した。するとこの方法論の改善により、外来遺伝子導入の効率をさらに上げることが可能になった。具体的には、β-galactosidaseの遺伝子を前もって、pRSVLプラセミドDNAに組み込ませ、このpRSV-β-galをマウスの大腿筋の筋肉に注入して、3日後と3週間後との異なる時間経過で外来遺伝子であるβ-galactosidaseの発現を、酵素組織化学的およびガラクトシラーゼの抗体を利用して、免疫組織化学的に染色し、さらに電顕的に、その発現の微細構造を明らかにするべく検索した。次に、pRSVβ-galのみならず、L7RHβ-galの同様に注入して、プラセミドDNAの種類による遺伝子導入様式の違いについても検索した。その結果、pRSVβ-galを使用すると、遺伝子導入された筋肉ではブルーに染めだされ筋肉の全体にβ-galactosidaseの発現が光顕的に認められた。この部位を電顕的に詳細に観察すると、筋原線維の間に針状結晶様の電子密度の高い構造物が認められ、これが酵素組織学的に染色されるものの微細構造であることが明らかとなった。また、L7RHβ-galを使ったときには、筋肉内の核の部分にのみに限局してその発現が認められ、電顕的にもそのことが証明することが出来、組み込みの際のプラスミドDNAの種類により、その導入される遺伝子から発現する蛋白質の存在様式が異なってくるという事実が明らかになった。さらに、免疫組織化学的染色を試み、さらに詳細な検討を試みたが、バックグラウンドが高くうまく検索出来なかった。現在、その原因について検討中である。また脳内への投与例について現在、光顕的や電顕的に検索しているが、良い結果が得られず、更に検討中である。これらの結果を踏まえ、脳内へプラスミドDNAの注入を試みる予定である。
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