研究概要 |
磁気共鳴法(MR)の種々の手法をとりいれて脳神経疾患の病態解析を行うことを目的とし、本年度は以下の研究を行った。まず、拡散画像法の確立とその基礎および臨床応用を行った。基礎実験では、実験用MRI装置を用いて、測定パルス系列の開発を行い、脳浮腫、脳虚血巣の水の拡散画像による解析を行った。その結果、拡散画像では病巣の検出が通常のMRIより早く行えることが判明した。また、脳浮腫でもtypeによって拡散の速度が異なり、vasogenic edemaでは速く、cytotoxic edemaでは、より遅い拡散を示した。脳虚血では、早期には遅い拡散を示した。この方法を1.5Tの臨床装置でも適用出来るよう研究を行った。脳腫瘍では、正常と比べて遅い拡散を示し、腫瘍での水分子の運動の自由度が高いことが示された。脳虚血では、病巣の検出が通常のMRI画像よりも鋭敏であった。また、脳組織の線維走行方向も拡散画像で解析可能であった。 次に、 ^1HーMRSについて最適方法の確立とその脳神経疾患への適用を行った。その結果、局在法としては、Chomical shift imaging(CSI)法が最適であり、一度の測定で多くの小さな部位(voxel)から分解能のよいスペクトルが得られた。臨床用装置(1.5T)では、1×1×2cmのサイズの256個のvoxelを25分間で測定し得た。正常脳では、Nーacotyl aspartate(NAA),creatine,choline(Cho),inositolなどが測定された。脳腫瘍では、NAAの低下、Choの増高、乳酸の出現が認められ、悪性度の高いものほどその傾向が高かった。またCSIの利点として、各ピ-クの画像化が可能で、代謝物質の分布図が得られた。脳腫瘍、脳梗塞などの病変部では、NAAの欠損や乳酸の出現が画像として捉えられ、機能画像法への応用が開けた。今後、動物実験、臨床ともこのCSI法がMRSの研究法として広く活用されるようになると考えられた。
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