本研究では医用レーザーの中でも組織深達度の点で安全性が高いと考えられる炭酸ガスレーザーに注目し、その椎間板髄核蒸散法としての可能性を明確にすることを目的とし、他の椎間板内療法と比較検討した。 実験材料としてはヒト椎間板に類似していることから、カニクイザル22匹、若年群(平均年齢2歳、平均体重3Kg)15匹、壮年群(平均年齢10歳、平均体重8Kg)7匹を用いた。実験方法は、ケタラール麻酔下、経腹膜的に前方から腰椎部の4椎間板(L3/4〜L6/7)に対する処置をおこなった。すなわちキモパパイン550u/0.2ml注入、コンドロイチナーゼABC 2u/0.2ml注入、炭酸ガスレーザーによる蒸散、および鉗子による髄核摘出である。炭酸ガスレーザー手術装置は、持田MEL-10Sを用いた。髄核蒸散に最適な照射条件は、照射距離を30から35mm、出力5W、パルス時間0.5秒とし、合計150Jに設定した。検討方法は、1日から96週後に屠殺して腰椎柱を摘出し、MRIをSE法T1T2強調矢状断像にて、またSafranin-0、およびH-E染色により、病理組織学的に検討した。 MRIT2強調像での髄核部分の輝度低下をキモパパイン・炭酸ガスレーザー・髄核摘出・コンドロイチナーゼABCの順に認めた。しかしキモパパインでは、椎体軟骨終板および線維輪内層にまで組織障害がみられた。修復に関しては、若年群においてMRI上の輝度は、全処置椎間で48週までに回復を認めた。Safranin-0染色体についても同様であった。しかしながら壮年群では、椎間板変性の進行が認められた。 炭酸ガスレーザーは、その効果、組織障害性、修復より見て、理想的な椎間板内療法としての条件を備えていると考えられた。しかしながら、長期的には実験動物若年群、壮年群ともに各療法間の差は少なく、壮年群では椎間板変性を惹起することが示された。安全性、有用性は高いが、従来の方法を明らかに優越するものではない。
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