研究概要 |
ヒト椎間板の線維輪構築を5ヵ月胎児から成人にわたって観察した結果,最も病的変化の焦点となる後方線維輪は一貫して不完全属板構造を示し,属板間結合が粗であることを始めて明らかにし得た。胎生期ではこの属板間に多くの血管侵入がある。椎間板変性あるいはヘルニアは,この発達上における宿命的な構造的弱化と不可分の関係を有すること,および疼痛受容の標的部位であることが示唆された。研究計画におけるこれら椎間板障害における神経根および節でのNeurotransmitterの消長に関する解析は研究開始時すでに抑制性アミノ酸であるGABAおよびglycine受容体のmRNA,および興奮性アミノ酸としてのglutamate受容体のうちのNMDA型受容体にむしろ焦点をあてるべきとの判断にもとずき,in situ hybridization組織化学の手法により,分子生物学的解析に方法論を変更した。研究の精確性を保つため,侵害刺激は動物後肢への5%ホルマリン注射とし,アミノ酸受容体mRNA,GABA,glycine,glutamate受容体mRNAの神経節と脊髄後角における分布と消長を検討した。その結果,NMDA受容体は後根神経節と脊髄後角に分布し,侵害刺激により僅かに増加することが証明された。本研究は単年度の予定であったが,解析手法の高次性から,現在引きつづき続行中である。すなわち,急性炎症および慢性炎症過程における疼痛伝達機構をメチル化牛血清アルブミン誘発関節炎ラットについて解析中である。向後2ヵ年後に疼痛伝達の新たな物質とその経路が明らかになると想定される。
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